レーシック活用、迷ったらココ
ふるえの症状でもうひとつ重大なものに、アステリクシス(固定姿勢保持困難)といって、不規則にふるえ、一定の姿勢を維持できないタイプがあります。
肝不全や腎不全、高カルシウム血症など代謝性の病気が悪化して、血液中にアンモニアなどの有害物質がふえすぎ、脳にまで達したときに出る症状です。
典型的なのは「羽ばたき振戦」で、両腕を横に上げたときにその姿勢を保てず、ふっと力が抜けて両腕が下がります。
それでも腕を支える筋肉が緊張しているため、また腕が上がるという状態をくり返し、あたかも烏が羽ばたいているように見えます。
羽ばたき振戦が起こっているときは、意識障害を起こしていることも多く、歩くとふらふらします。
そのままでは生命の危険があるので救急の処置が必要です。
パーキンソン病はなぜ起こるのでしょうか。
現在、さまざまな研究が進められていますが、今のところ、その根本の原因はわかっていません。
パーキンソン病がどのようにして進むのか、そのしくみはかなり解明されてきています。
パーキンソン病はひとことでいえば、中脳の黒質の変性によりドーパミンという神経伝達物質が減ってしまい、大脳にある線条体からの』砺令がとどこおり、からだの動きがうまくできなくなる病気です。
このしくみについて、もう少しくわしく理解できると、薬がなぜ必要か、あるいはパーキンソン病と同様の症状を示すパーキンソン病以外の病気などとの区別のしかたなどもわかり、治療を進めやすくなります。
二九ページの図を参照しながら、治療を進めるうえで知っておくと役立つパーキンソン病のメカニズムのあらましを説明しましょう。
さて、大脳皮質の下の基底核という部分には私たちのからだの運動機能をつかさどる線条体という組織があります。
線条体は私たちがからだを動かすときに、どの筋肉をどのように動かしたらよいかということを命令する発信基地です。
パーキンソン病では日常のなにげない動作をすることがむずかしくなりますが、そのなにげない動作を、私たちが特別な意識をもって計画しなくてもできるように指令を出しているのが線条体です。
この線条体にはさまざまな神経伝達物質が集結しています。
なかでもパーキンソン病との関係が深いのがドーパミンとアセチルコリンです。
線条体でこの二つの物質のバランスが保たれているときには、大脳皮質への連動指令がスムーズに伝わります。
ところが、そのバランスがくずれ、ドーパミンが減ってアセチルコリンが相対的にふえると、連動指令がうまく伝わらず、さまざまな連動動作が緩慢になったりできなくなる、あるいは、ふるえが出たり、筋肉がこわばったりするのです。
一般にドーパミンの皿がもとの二○パーセント以下に減ってしまうと、パーキンソン病がはじまるとされています。
ドーパミンが足りなくなる最大の原因は、線条体へのドーパミンの供給不足です。
ドーパミンはじつは中脳の黒質の神経細胞でつくられています。
黒質の神経細胞はその枝を線条体にむかって伸ばし、できあがったドーパミンを分泌しているのです。
線条体の神経細胞の受容体がこのドーパミンを受け取って運動指令を出しています。
黒質の神経細胞が何らかの原因で変性し、その結果、萎縮して数が減ると、当然ドーパミンの絶対量が減り、線条体への供給が不足します。
最近では、ドーパミンの分泌を促進する物質やドーパミンの受容体の働きをよくする物質、ドーパミンの分解を妨げて長続きさせる作用のある物質などが見つかっています。
また、黒質の下部にある圭同斑核で作られるノルアドレナリンの減少もパーキンソン病と関係があることがわかりました。
これらの研究成果からさまざまな薬が開発されていますが、それでも根本となるドーパミンの量が少なければ、運動神経の伝達はなかなかうまくいきません。
つまり、パーキンソン病では黒質の変性によるドーパミン不足が病気の本体であり、このドーパミンを適切に補充していくことが治療の基本となります。
パーキンソン病では、線条体でのドーパミンの不足から神経系の指令がうまく伝わらず、さまざまな運勅謄堅口があらわれますが、じつはドーパミンが十分でも、ほかの原因で線条体や線条体からの神経経路が障害を受けると、パーキンソン病にそっくりな症状が出ることがあります。
症候性パーキンソニズムといいます(一般にはパーキンソン症候群ともいい、本書では便宜的にパーキンソン症候群と呼ぶ)。
パーキンソン病ではなくてパーキンソン症候群を起こす原因としては、脳腫傷や正常圧水頭症、脳血管障害などの病気、脳のけが(慢性硬膜下血腫など)、ほかの神経系が変性する脊髄小脳変性症などの病気、有害物質による中毒などがあげられます。
また薬によって引き起こされるものもあります。
薬のなかにはドーパミン受容体を遮断してドーパミンの作用を妨げ、パーキンソン病とそっくりな症状を引き起こすものがあります。
よく知られているのは向精神薬のメジヤートランキライザーですが、このほか吐気を抑えるメトクロプラミド、抗概傷薬のスルピリドなどでも起こります。
これらの薬をのむと、数週間で固縮や無動などの症状が左右対称に出てきます。
薬を中止すると、六〜八週間くらいで症状がなくなります。
パーキンソン症状を起こす薬はほかにもいろいろあるので、どんな薬をのんでいるか、漢方薬や健康食品もふくめて必ず主治医に伝えてください。
抗パーキンソン病薬を使うことで、症状が悪化し、副作用が出ることもあります。
また、ほかの治療法でよくなるものもあります。
このためパーキンソン病と思われる症状が出たときには、必ずこうした病気や原因の有無を鑑別することが必要です。
お年寄りでは、動脈硬化が進み脳卒中などの脳血管障害から線条体をいためている場合も少なくありません。
動脈硬化性パーキンソニズムあるいは血管障害性パーキンソニズムといいます。
とくに小さな脳梗塞がたくさんできる多発性脳梗塞は、大きな発作を起こさずに線条体をいためている可能性があります。
私高血圧や糖尿病があり、喫煙の習慣などから脳の動脈硬化が進んでいて、パーキンソン病にそっくりの症状がある場合には、この動脈硬化性パーキンソニズムを疑う必要があります。
縦動脈硬化性パーキンソニズムの症状はよく観察すると、パーキンソン病の症状と少し違う点訓があります。
まず、安静時のふるえはあまりひどくありません。
その一方で無動が目立ち、早くから歩行障害や姿勢反射障害が起こります。
発病はパーキンソン病にくらべると遅く、だいたい七十歳前後の高齢者に多いのです。
MRI(磁気共鳴画像)で検査すると、複数の小さな梗塞が見つかります。
動脈硬化性パーキンソニズムではドーパミンの分泌は正常ですから、抗パーキンソン病薬は効きにくく、かえって副作用が出やすくなることもあります。
また、脳梗塞のために寝たきりや痴呆が引き起こされる確率も高くなります。
このため、脳梗塞の治療を中心にいろいろな症状に対処していくことになります。
ところで患者さんのなかには本物のパーキンソン病と動脈硬化性パーキンソニズムを併発している場合もあります。
こうなると、症状の進行も早まりやすくなります。
そうした場合でもいろいろな薬をきめ細かに調整することで、日常生活での支障をなるべく少なくし、症状を改善していくことは可能です。
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